口鼻臭臨床研究会 
第一回学術集会2006
市民公開講座

                知ってて役立つ、においの豆知識


                においがなかなか取れないのはなぜ?

においの性質-1  
鼻(嗅覚)感度とにおい成分濃度との関係


(解説)我々は、日常生活の中で意識をしなくともさまざまなにおいと触れ合っています。
毎食の食卓にのる様々な料理は、その味とともに、料理が醸すにおい(香り)が食事を楽しく
してくれます。また、一歩街に出れば、その町のにおいというものがあります。
さて、このにおい、鼻は、どんな濃度で感じているのでしょうね。焼肉屋での食事を終えて、
自宅に戻れば出迎えの家族に簡単に今までの所在を言い当てられるということはどなたにも
経験のあることでしょう。におい成分は、我々の鼻で感じるのは、濃度的に言えば
ppb(十億分率を示す単位、%は百分率)という極く僅かな濃度で感じます。
そして、これを希釈していってもなかなかにおいが取れないのは、におい成分濃度とにおい
(嗅覚)感度との関係は、直線(リニア)関係ではなく、100倍も希釈してもにおい
感度的には1/2にしかならない、1000倍希釈でも1/3という、対数関係にあるからです。
このように、我々の嗅覚はにおいに対して執拗な感じ方をするのは、きっとにおい(嗅覚)
が人類の生存戦略の中で大きな意味を持っていたことを示すものと考えられますね。


              においには、すぐ慣れるが...
においの性質-2

(解説)前述のにおい感度とは、逆に我々は、においにすぐに慣れます。たとえば、海外旅行で空港に着いたとします。そのときにその国のにおいを感じると思います。たとえば、韓国ソウル空港ではキムチのにおいでしょうか?また、逆に海外からの旅行者は、日本は「味噌くさい」と言います。そのそれぞれのにおい、暫くすると気にならなくなっている(随分後になってから、多分ひとに言われるまで気が付かないほどに)。こんなことは、誰でも経験があると思います。これがもっと強烈なにおいであっても、その臭いに対する無感覚への早い順応性があります。これも、われわれ人類が得た、生存戦略の一つなのでしょうね。しかし、これは同じ(質の)においで言えることで、そこに、異質なにおいが入ってくるとそのにおいに感じるわけですが、我々の嗅覚の特性とは非常に興味がありますね。

               地球上に、どれだけのにおい成分があるの?
ガスの中にも臭うガス、臭わないガスがある


(解説)においは、共通しているのが揮発性であること、言い換えれば、すべてガス(気体)であることです。地球上には、天然物、合成物合わせて、200万種の化学成分が在ります。そのうち、40万種がにおいのあるものです。そして、人間が感じるのは10万種といわれています。我々は、においを考えるときにこのようなことを前提に考えることが必要と思います。においを取り扱うときに困難を伴うのはこの多成分系であることです。においを測る、においを作る、においを取るなど、においに関する分野は非常に多岐に渉っていますが、それぞれに特有な技術が開発されています。単純に科学技術のテクニックを使うだけでは、目的を達せられていないまさしく「職人技」が活かされています。そういう面から、におい関連事業は他の分野よりも、より人間臭い分野かもしれません。

                  においをつくるのは、いったい誰?

(解説)におい、先述のようににおいは揮発性の化学物質です。このにおい成分は、大きく分けて二つに分かれます。一つは自然の生態系(これは、単に目にする大自然だけでなく、自然物としてのすべてを指します)からのもので、具体的には植物、動物(人間を含む)、そして微生物です。つまり、それらの生命活動からの生産物としてガスがつくられます。もう一つは、人間のつくる人工的な生産物です。工場から出る悪臭公害で問題となる場合などのものです。


前者の自然物(生命体)から出る場合で、人間が関与した、つまり人工環境から出るものの多くは悪臭を発する成分が多いですね。口のにおい、体臭、おならのにおい、生ごみ、どぶのにおいなど、生命現象からのガス産生ですが、余り歓迎されないものが多いようです。これらのにおいの張本人は、微生物、中でも嫌気性で病原性のものがこれに該当します。そう考えてみますと、におい(悪臭)を発すると言うのは、矢張りその環境は改善する余地があるという「警報」でもあるのですね。


           汗臭い! 汗ににおいは有るの?

(解説)汗臭い!!特に夏の帰りの電車の中や自宅に戻って着替えをするときなどに、これを感じます。一体汗にこのようなにおいはあるのでしょうか? これは否です。重篤な病気がある場合は別にして、汗にはにおいはありません。しかし、汗には様々な生体成分が汗(水)と一緒に出てきています。当然、皮膚には様々な細菌がいますから、それを食べて色々なものと一緒ににおい成分も作られます。汗をかいたままその状態を放置すればするほど生産物(におい成分)が蓄積されて、強烈なにおいになるというわけです。体育会系クラブの部室(ロッカー)のにおいなどその典型です。このことは、足のにおい、腋の臭い、口の臭いなどの発生メカニズムと本質的に同様です。汗などの体液には臭いはなく、臭いはその後の細菌の営みの結果ということです。


           おならは、臭いもの?
おならは、臭いものとの「決めつけ」があるようですが、私の父は家の中でときどき
音の出るおならをしますが、ちっとも臭わないのですが....


(解説)おならのにおいはいつも同じではありません。また、人によっても様々です。これは、おならの出来るメカニズムを考えればよく理解できます。おならは、大腸の中でつくられます。大腸に入ってきた未消化物質が腸内に棲む様々な細菌の作用でつくられます(細菌の数は100兆個、種類は500種以上と言われています)。このとき、食物残渣の種類によっても、また細菌の種類によっても生成されるガス(におい成分)が大変影響されます。

おならの主成分は量的に言えば、窒素、炭酸ガス、水素とメタンでこれらが99%以上です。残りのほんの僅かな中にppm(百万分率の単位)オーダーのにおい成分が含まれます。におい成分は、イオウ系、窒素系、低分子量有機酸などそれぞれppmの含有量です。しかし、これらは、ppbオーダーでにおいを感じさせますので、これらの複合体があのにおいということになります。しかしながら、食べ物、腸内細菌の変化でこのにおい傾向が変わります。特に、中高年になりますと細菌の種類が変わってきていわゆる、悪玉菌が増えることによりおならのにおいが強烈になってくると言えます。この質問の方のように、ガスの量は多そうですが、臭わないというのは、多分この方の腸内細菌(フローラといいます)は悪玉菌が少ないと考えられます。一般的に言えば、野菜中心の食傾向の人はガスの出が比較的多いです(食物繊維など高分子炭水化物は、水素の産生が多くなる)が、においはきつくない。方や、肉食、たんぱく質好みの人は、ガス量は少ないですが、臭いは強い人が多いと考えられます。如何に腸内細菌を良いカタチでコントロールするか、重要な課題です。


           大自然の山の中には、倒木や落ち葉、動物の死骸、糞尿などが在るはずなのに、
ちっとも悪臭を感じないのはなぜですか?


(解説)そうですね、大変良いところにお気づきですね。都会で動物の糞尿、死骸など放置されておりましたら大変ですね。動物園のあの独特な異臭や生ごみ臭など人間社会(都会など人間が介在する空間)では色々と問題になっていますね。

一方、大自然の森は、いわば野生の動物園でもあるわけですが、山登りをしたときに嫌なにおいを感じたことがありません。これは、自然、植物のもつ「不思議」ですが、近年研究が進み、そのなぞが解かれてきました。それは植物の出すフィトンチッドという揮発性成分の消臭作用と悪臭を出す微生物の抑制作用に拠るためだろうことがわかってきております。このフィトンチッドを積極的に植物から採って都会社会で活かそうという活動(事業)が徐々に広がっています。つまり、都会であっても森の中にあっても、消臭作用と悪臭を発生する微生物の抑制をするフィトンチッドが存在すれば良いわけです。そういう視点から、都会をそのような環境整備をすることがこれからの都市再生のポイントだということを主張する研究者も出てきております。

             体臭は、食べ物で変わる?

(解説)体臭の要因は、幾らか考えられますが、食べ物との関係で説明します。食べ物は、生命維持、栄養源として欠かせませんが、その種類は人によって個人差があります。当然、好みということもあります。しかし、大まかに言って、次の二つに分類できると思います。一つは、野菜中心の場合、もう一つは、肉食中心という場合です。結論を先に言いますと、前者は、体臭は少なく、後者の方がより体臭が強い傾向を示します。簡単に言えば、肉食の人の腸内細菌は年齢を重ねるごとに悪玉菌を増やす傾向をもっており、出来た悪臭が血液を経由して全身の皮膚からそれを発散すると考えては如何でしょう。当然、呼気にも出てくることになります。一方、野菜の高分子炭水化物(食物繊維)は、細菌の好んで食べるいわば細菌の「大好きな食べ物」です。結果的に、善玉菌が活発に棲み付いているので、悪玉菌の出る幕がなくなると言うわけで、同じ年齢でもその腸内細菌叢(フローラ)に大きな違いがあることになります。このようなことで、食べ物によって、体臭が変わることは大いにあることです。このことは、鈴木隆さんの悪臭学(イースト・プレス、55頁の辺り)にも詳しく体験談が記述されています。

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